東京から立科町へ 新規就農への道
五輪久保の森
2019年梅雨のころから、私は体調を崩し会社を休んでいました。 夏になり、妻が「気晴らしに旅行に行こう」と言い私たちは北八ヶ岳に向かいました。 湖のほとりの宿に泊まり白駒池に行ったあと、黙坊さんでそばを食べました。 予約をしていないと難しいのですが、その日はたまたま入ることができました。 そばは美味しく、とても満足して東京に帰ります。 東京へ向かう途中、たまたま立科町の五輪久保を通り、そのりんご畑を目にしました。 私は思わず「凄いな!このりんごの木!」と叫んでしまいました。
農業大学研修部
9月、妻に誘われて池袋で行われていた「農業フェア」に行きました。 日本全国から多くのブースが並んでいて、その中に「立科町」のブースを発見しました。 その瞬間私は「五輪久保の神々しいまでのりんごの森」を思い出しました。 緑の葉っぱ、木の肌触り、土の匂い、風さえ体感したのです。 そして、私はブースの前に行き「りんご農家になるには、どうすれば良いですか?」と、ごく自然に当たり前のように言っていました。 担当の方は「まず農業大学校の研修部で研修を受けてください」と言いました。 こうして、長野県農業大学校研修部に入ることになったのです。
90歳のおじいさんの言葉
農業大学校の新規就農里親前基礎研修を受講しようと、申し込みをし面接をしました。 面接の時私は「五輪久保の神々しいまでのりんごの森を見て、ここでりんご農家をやりたいと強く思いました」と言っていました。 それは素直な正直な気持ちでした。 面接の結果は保留。受講要件の「農業体験を7日以上受講していること」が満たしていないと判断されたようです。 要件を満たすため先進農家さんを紹介いただき、3日間の研修をさせていただくこととなりました。 2日間は剪定をさせていただき、1日はジュースづくりの手伝いをさせていただきました。 その先進農家さんは、そのジュース作りで今シーズンの仕事が終了ということで、食事に誘われました。 その時のこと、先進農家さんの90歳のおじいさん(現役です)が 目をキラキラさせてこう言ったのです。 「やりたいことをやらせてもらって、今もこうして働かせてもらって、俺こんなに幸せでいいのかな」 もう70年もりんごを作っているので身体もしっかりしているし、本当にキラキラしていて、 「老いるってこういうことか」と思いました。 こんな素晴らしい世界があるんだ。私はこれに向かっていけばいいんだ。 そう実感した瞬間でした。
Comments